夏の思い出

直前のブログで書いた、高校時代の旅行の話。10年くらい前、フリースクールの通信を作るために旅行の話をまとめた原稿が出てきた。伊豆大島のことをいろいろ思い出したので、少し長いけど転載。お時間のある方は、どうぞ。

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「旅行っていうのは苦労してナンボ!帰ってきてくたくたに疲れているのがいいんだよ!温泉でヌクヌクポカポカしてる場合じゃねぇ!もっと、こう、自分をボカボカしてるような…」
これは高校時代の友達との会話。みんなそれが当たり前だと信じていたし、こういうのを旅って言うんだと信じていた。

18歳の夏。期末試験終了日。出発は当日夜のため、試験が終わったら即家に帰って寝なくてはならない。いかんせん前日までは一夜漬けでテスト準備をしていたために、目の前に広がる世界は白くぼんやりとしている。気を抜いたら真っ暗闇の眠りの世界へ…。
しかし、家に帰るとちょうど親戚がわんさか来ていて賑やかでは。眠れない。焦る。余計眠れない。そうこうしているうちに出発の時間に。

集合場所は、高校の前・東京都練馬区。当時の自宅は埼玉県入間市。なんと集合場所までに一時間以上!こんな準備運動ってない。夜9時の集合時間に合わせて自転車をこいでいると、
「パン!」
「???」
なんと、パンク。集合場所までいけないでは。この時間では、自転車屋さんも閉店。コンビニでセメダインを買い、シールを貼ってみるも、空気入れがない。そもそも、こんなんじゃ直らない。

「すいません!」
気がつくと閉店している小さな自転車屋さんの裏口の呼び鈴を押していた。
「あ。もう終わってるんだけど」
「他に頼るところがないんです」
「飲んじゃってるよー。いいの?」
「お願いします!」
その後、閉店したお店に明かりをつけてもらい、修理してもらう。
「いやー、何か若い子がパンクしたとかで直してんだよ。もう、いい感じに飲んじゃっててさぁ。ん?明日?競馬?……」
誰と話しているんだか、電話片手に工具を動かすおじさん。
「ほい!終わった!割引するよ。」
「いや、でも…。」
「いいんだって!若いんだから!!」

そんな珍道中の幕開け。目指すは熱海。夜中中走る。ブレーキが切れるH、走りながら寝てるK、「やっぱ音楽聴きながら行きたいっしょ!」と、後ろの荷台に荷物より重いラジカセをくくりつけてくるW…。それでもみんな何かに追われるように自転車をこぐ。さらには横浜で迷子になり2時間迷ったり…。

そして、午前11時。ようやく熱海へ最後の下り坂。
「あ。見えた。やったぁ…。」(元気なし)
最後の気力を振り絞ると同時に「プシュー…」。なぜか目前でパンクしちゃうA…。
ぎりぎりセーフで伊豆大島行きのフェリーに。その船中。
「大島行きのフェリーって、東京からも出てるんだよね。別に熱海まで来る必要ないんだよね。」とM。一同脱力。

大島到着から宿へ最後の上り坂。
「わー!」と登ると、
「はれ?ギアが軽い!」
宿目前にてチェーンが切れちゃうM…。一生懸命こいでいるも、後退するばかり。聞こえてくるのは「シャカ!シャカ!」と、空回りする小気味良いペダルの音。
「先に行ってて…」
遠ざかる空回りするペダルの音…。

泊った場所は事前の写真と全く違って土間。風呂なし。仕方なく隣のホテルで風呂に入るも全身日焼けで激痛が走り入れない。
「絶対入ってやる!」
と、なんだかよく解らない根性論を振りかざして、余計真っ赤になってるK1。トイレの鍵をかけないで入っていて、ノックも無しにドアを開けられたのに「ごめん…」とズボンを下ろしてしゃがんだ状態で日焼けの顔を赤くしながら言ってるK2…。笑いは絶えない。

二泊目は「もうこんな生活や嫌だ!(一泊しかしていないけど)」と宿を飛び出して、砂浜へ。打ち上げられたクジラのようにぐったり寝ている姿がよほど可哀相だったのだろう。地元の人が開店前の海の家の屋根をかしてくれた。ありがたい!けど、壁がないので朝起きるとまぶたを虫に食われてしまっている。大島の豊かな自然に育まれた虫はのびのび成長していて、強く、そして加減というものを知らないらしい。ぼくのまぶたは試合直後のボクサーのようになっているでは…。

そんな状態でも出発。ちなみにラジカセを持ってきたWは「やっぱり重い…。ハンデありすぎ」と、勝手に持ってきたくせに言い出す。
「置き土産…」と、波止場に置いてそそくさと出発しようとすると、、
「お兄ちゃん!忘れ物!」と、地元の人。
「あ!すいません!ありがとうございます!いっけねぇ!!」なんてカタコトのW。

実は、往路があまりにもキツかったので自転車は宅急便に乗せて電車で帰ろうという話もあったのだけれど、
「家に電話したら、『だからおめーにはできないって言ったんだ!』と、親父言われたからよ!おれは一人でもチャリで帰る!」
というWの言葉で結局みんなでペダルをこぐはめに。

それにしても炎天下。のどが渇いてしょうがない。
「ちょっと待って。ウーロン茶買う。」
みんなで自動販売機の前で小休止。みんなぼんやりしていると、
「おふ!」
「ん?」
「これ、ほら、ホット!」
この炎天下の中、なぜかアツアツのウーロン茶を買ってしまったW。
「ほら、お土産に…」
なんて土産好きなやつなんだろう。

途中大磯で一泊いれて、海で遊ぶ。あれだけヘトヘトなのに、みんな気がつくと海パン。
「海だー!」
「ほら!走れ!走れ!!」
海開き前の海岸を男7人で走り回る。波ではハードル競争したり、とにかく転がったりと、なんともバカそのものの絵。久しぶりの布団で泥のようになって眠る。

本当は成績を渡される登校日前日に戻る予定だったけれど、遅れに遅れて予定日の夜中に学校に帰還。守衛さんにお願いして、学校のロビーで寝かしてもらうことに。
「風呂、入りたくない?」
みんなでこっそりプールの柵を越える。お風呂の気分なので、プールサイドで頭を洗ったり。湯船と化したプール(水なので日焼け肌には適温)でのんびり泳ぐ。

そして、ロビーに戻って就寝…といきたかったけれど、
「あ!ゴキブリ!おれ、だめ!」とK2。ここまできて、最大の敵はゴキブリとは…。小さな強敵(多勢)に追い出されるようにカラオケで一晩越す(寝る)。
翌日、自転車で帰宅。お土産は、成績表オンリー。いっそうペダルをこぐ足が重くなっていった…。

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「なんでそんなことするんだ。行かなきゃいいのに」と祖母に言われたけど、無茶そのものの旅行だった。なんとも懐かしい。ちなみに、一緒に自転車をこいでいた友人の中には、今、政治家、弁護士、会計士…という道にいる者も。それぞれ自分の考えを突きとおすかのように、走り続けているようだ。「あの旅行は人生の転機だよ」なんてお互いに言い合える時間を過ごした場所。それが僕にとっての伊豆大島。